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日本語で日本近代文学を書く小説家 A novelist writing modern Japanese literature in the Japanese language
著書
『母の遺産-新聞小説』2012年
2012年大佛次郎賞受賞。スロベニア語訳・スペイン語訳・英訳。2015年中公文庫。家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?親の介護、姉妹の確執・・・離婚を迷う女は一人旅へ。日本の新聞連載の歴史と役割を顧みながら、現代の50代の女がしばしば直面する危機を描いた。
2012年中央公論新社。読売新聞土曜版の連載小説を単行本化。
『日本語で読むということ』2009年
2009年筑摩書房。なぜ『日本語が亡びるとき』は書かれることになったのか?そんな関心と興味にもおのずから応える、ここ二十年の間折にふれて書きつづられたエッセイ&批評文集。随筆風のものが多く、中勘助、吉川英治、谷崎潤一郎、有島武郎、菊池寛、田辺聖子、幸田文、夏目漱石、辻邦夫、加藤周一、ジェーン・オースティン、エミリー・ブロンテ、松島トモ子、渥美清、ジョン・トラヴォルタなどを取り上げている。
『日本語で書くということ』2009年
2009年筑摩書房。なぜ『日本語が亡びるとき』は書かれることになったのか?そんな関心と興味にもおのずから応える、ここ二十年の間折にふれて書きつづられたエッセイ&批評文集。やや学術的なものが多く、夏目漱石の『行人』、『虞美人草』、谷崎潤一郎の『春琴抄』、ポール・ド・マンの『盲目と洞察』『読むことのアレゴリー』の分析などが入っている。
『日本語が亡びるとき-英語の世紀の中で』2008年
2009年小林秀雄賞受賞。英訳。2015年ちくま文庫・2008年筑摩書房。「普遍語」「現地語」「国語」という概念を使い、日本語が「国語」として成立したこと自体が、いかに奇跡的だとも言えるかを、近代以前にも遡り歴史的に見てゆく。
『本格小説』2002年
2003年読売文学賞受賞。仏訳・韓国語訳・英訳・スペイン語訳・中国語(繁体字)訳。2005年新潮文庫・2002年新潮社。ある夜「水村美苗」は奇跡の物語を授かった。米国での少女時代に出逢った実在する男の、まるで小説のような人生の話。日本近代文学史で長いあいだ問題となっていた「本格小説」は何かという問いを問いながら、軽井沢に芽生え、階級と国境に一度は阻まれた恋の物語が幾重もの語り手によって語られる。西洋文学の翻案という日本近代文学の出発点を意識し、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』を基にしているが、そこに立ち現れるのは、戦後日本の肖像である。
『手紙、栞を添えて』
韓国語訳。2009年ちくま文庫・1998年朝日新聞社。四季折々の移ろいのなかで、互いに面識のないふたりの小説家が、文学への深い愛情をこめ、新聞紙面を通じて織りなした往復書簡集。『宮本武蔵』『若草物語』『ジェーン・エア』などから始まり、幼少時代の読書体験から古今東西の名作へと、縦横無尽に話題は広がる。本を読むことの幸福感に満たされた一冊。
『私小説 from left to right』1995年
1995年野間文芸新人賞受賞。英訳、中国語(簡体字)訳。2009年ちくま文庫・1995年新潮社。「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカに溶け込めず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国をためらい続けてきた。雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫刻家の姉と、英語・日本語まじりの長電話が始まる。異国に生きる姉妹の孤独を通じて浮き彫りになるものとは・・・。本邦初、横書き小説の試み。
『続明暗』1990年
1990年芸術選奨新人賞受賞。ちくま文庫2009年・新潮文庫1993年。漱石の死とともに未完に終わった『明暗』。津田が、新妻のお延をいつわり、かつての恋人清子に会おうと温泉へと旅立った所で絶筆となった。東京に残されたお延、温泉場で再会した津田と清子はいったいどうなるのか。日本近代文学の最高峰の一つを完結させた。漱石の文体そのままで綴られている。
『明暗』1990年
夏目漱石著、岩波書店1917年。
『續明暗』1990年
筑摩書房1990年。単行本は正字と歴史的仮名遣いを用いて書かれた。
翻訳書
英訳
An I-Novel
『私小説 from left to right』の英訳。Translated by Juliet Winters Carpenter in collaboration with the author. New York: Columbia University Press, 2021.
Inheritance from Mother
『母の遺産-新聞小説』の英訳。Translated by Juliet Winters Carpenter in collaboration with the author. New York: Other Press, 2017. Selected, “Worth Sharing—A Selection of Japanese Books Recommended for Translation, vol. 4, Living in Japan,” Japan Foundation.
The Fall of Language in the Age of English
『日本語が亡びるとき-英語の世紀の中で』の英訳。Translated by Mari Yoshihara and Juliet Winters Carpenter in collaboration with the author. New York: Columbia University Press, 2015. Kobayashi Hideo Award, 2008. Selected, Flavorwire's 10 Must-Read Academic Books, 2015. Selected, World Literature Today's 75 Notable Translations, 2015. Selected, Flavorwire's 10 Best Books by Academic Publishers, 2015.
A True Novel
『本格小説』の英訳。Translated by Juliet Winters Carpenter in collaboration with the author. New York: Other Press, 2013. Yomiuri Prize For Literature, 2002. Japan-U.S. Friendship Commission Prize for the Translation of Japanese Literature, Donald Keene Center of Japanese Culture, Columbia University, 2014-2015. Lewis Galantière Award, American Translators Association, 2014. Grand Prize in Fiction, Next Generation Indie Book Award, 2014. Best Translated Book Award Runner-up, 2014. Selected, Japanese Literature Publishing Project, Agency for Cultural Affairs, Government of Japan.
スペイン語訳
La herencia de la Madre
『母の遺産-新聞小説』のスペイン語訳。Translated by Tomoko Aikawa, edited by Luisa Borovsky. Buenos Aires: Adriana Hidalgo, 2015.
Una novela real
『本格小説』のスペイン語訳。Translated by Mónica Kogiso, edited by Luisa Borovsky. Buenos Aires: Adriana Hidalgo Editoras, 2008.
スロベニア語訳
Mamina zapuščina
『母の遺産-新聞小説』のスロベニア語訳。Translated by Iztok Ilc. Maribor, Slovenia: Litera Publishing House, 2019.
中国語訳
私小说:从左至右
『私小説 from left to right』の中国語訳。Translated by Hui Zhao 趙暉. Shanghai: Shanghai Literature and Art Publishing House 上海文艺出版社, 2015.
本格小説
『本格小説』の中国語訳。Translated by 王蘊潔. Taipei, Taiwan: Titan Publishing 大田出版有限公司, 2006.
フランス語訳
Taro, un vrai roman
『本格小説』のフランス語訳。Translated by Sophie Rèfle. Paris: Editions du Seuil, 2009.
韓国語訳
본격소설
『本格小説』の韓国語訳。Translated by Kim Chun-mi. Seoul: Munhak Dongne, 2008.
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