著書

母の遺産-新聞小説
中公文庫 2015年
中央公論新社 2012年
スペイン語訳 2015年、英訳 2017年刊行予定
大佛次郎賞受賞

家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?親の介護、姉妹の確執…離婚を迷う女は一人旅へ。日本の新聞連載の歴史と役割を顧みながら、現代の50代の女がしばしば直面する危機を描いた。

日本語で読むということ
筑摩書房 2009年

なぜ『日本語が亡びるとき』は書かれることになったのか?そんな関心と興味にもおのずから応える、ここ二十年の間折にふれて書きつづられたエッセイ&批評文集。随筆風のものが多く、中勘助、吉川英治、谷崎潤一郎、有島武郎、菊池寛、田辺聖子、幸田文、夏目漱石、辻邦夫、加藤周一、ジェーン・オースティン、エミリー・ブロンテ、松島トモ子、渥美清、ジョン・トラヴォルタなどを取り上げている。

日本語で書くということ
筑摩書房 2009年

なぜ『日本語が亡びるとき』は書かれることになったのか?そんな関心と興味にもおのずから応える、ここ二十年の間折にふれて書きつづられたエッセイ&批評文集。やや学術的なものが多く、夏目漱石の『行人』、『虞美人草』、谷崎潤一郎の『春琴抄』、ポール・ド・マンの『盲目と洞察』『読むことのアレゴリー』の分析などが入っている。

日本語が亡びるとき-英語の世紀の中で
ちくま文庫 2015年
筑摩書房 2008年
小林秀雄賞受賞
英訳 2014年、中国語(簡体字)訳 2017年刊行予定

「普遍語」「現地語」「国語」という概念を使い、日本語が「国語」として成立したこと自体が、いかに奇跡的だとも言えるかを、近代以前にも遡り歴史的に見てゆく。


本格小説
新潮文庫 2005年
新潮社 2002年
読売文学賞受賞
中国語(繁体字)訳、韓国語訳、スペイン語訳、仏訳、英訳既刊。
(英訳は文化庁「現代代日本文学の翻訳・普及事業」JLPPの作品。)

ある夜、“水村美苗”は奇跡の物語を授かった。米国での少女時代に出逢った実在する男の、まるで小説のような人生の話。日本近代文学史で長いあいだ問題となっていた「本格小説」は何かという問いを問いながら、軽井沢に芽生え、階級と国境に一度は阻まれた恋の物語が幾重もの語り手によって語られる。西洋文学の翻案という日本近代文学の出発点を意識し、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』を基にしているが、そこに立ち現れるのは、戦後日本の肖像である。

手紙、栞を添えて
ちくま文庫 2009年
朝日新聞社 1998年
韓国語訳既刊

四季折々の移ろいのなかで、互いに面識のないふたりの小説家が、文学への深い愛情をこめ、新聞紙面を通じて織りなした往復書簡集。『宮本武蔵』『若草物語』『ジェーン・エア』などから始まり、幼少時代の読書体験から古今東西の名作へと、縦横無尽に話題は広がる。本を読むことの幸福感に満たされた一冊。

私小説 from left to right
ちくま文庫 2009年
新潮社 1995年
野間文芸新人賞受賞
韓国語訳既刊
中国語(簡体字)訳刊行予定

「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカに溶け込めず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国をためらい続けてきた。雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫刻家の姉と、英語・日本語まじりの長電話が始まる。異国に生きる姉妹の孤独を通じて浮き彫りになるものとは…。本邦初、横書きbilingual小説の試み。

続明暗
ちくま文庫 2009年
新潮文庫 筑摩書房 1990年
芸術選奨新人賞受賞

漱石の死とともに未完に終わった『明暗』―津田が、新妻のお延をいつわり、かつての恋人清子に会おうと温泉へと旅立った所で絶筆となった。東京に残されたお延、温泉場で再会した津田と清子はいったいどうなるのか。日本近代文学の最高峰の一つを完結させた。漱石の文体そのままで綴られており、単行本は正字と歴史的仮名遣いを用いて書かれた。